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Beadsholic

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或るガチョウの物語

或る国に、金のたまごを生むガチョウがいました。
普通の白いガチョウでしたが、翼の羽根が1本だけ虹色でした。

農夫は金のたまごを生むガチョウを大切に飼ったので、お金に困ることはありませんでした。

或る晩、夢の中に、全身が虹色に輝くガチョウが現れて、ポトン!
と、ひとつ、たまごを生みました。
翌朝、農夫が鳥小屋に行ってみると、金のたまごではなく、
虹色のたまごがありました。

農夫が市場に持ってゆくと、それはすごくきれいな虹色だったので、
人が集まってきました。
ひとりの子供が言いました。“たまごの中身はどうなってるの?”
大人は口々に言いました。“中が普通の白身と黄身なら、金のたまごのほうがよいね”
子供たちが口を揃えて言いました。“割ってよ!割ってよ!割ってみようよ!”

農夫がたまごを“こつん”と叩くと、虹色の殻は割れ、
中からもくもくと煙が出てきました。
煙は空高く広がって、やがて薄く消えてしまうと、そこに大きな虹が現れました。
市場の人々は今まで見たこともない、大きくて美しい虹を、消えるまで眺めていました。

次の晩、夢の中にまたあの虹色のガチョウが現れて、ポトン!
と、ひとつ、たまごを生みました。
翌朝、農夫が鳥小屋に行ってみると、金のたまごではなく、また、
虹色のたまごがありました。

農夫が市場に持ってゆくと、それはすごくきれいな虹色だったので、
また人が集まってきました。
人々は口を揃えて言いました。“割ろうよ!割ろうよ!割ってみせてよ!”

農夫がたまごを“こつん”と叩くと、虹色の殻は割れ、
中からもくもくと煙が出てきました。
煙は空高く広がって、やがて薄く消えてしまうと、そこに大きな虹が現れました。
人々は大きくて美しい虹を、いつまでも眺めていました。

市場からの帰り道、農夫はおもしろくありませんでした。だって、
金のたまごを売った日は、市場で美味しいハムとワインを買って帰るのに、
昨日も今日も、たいしたものは買えなかったからです。
農夫は家に着くと、ガチョウの世話をしながら、ちょっとだけため息をつきました。

その次の晩、農夫は夢を見ませんでした。

翌朝、農夫が鳥小屋に行ってみると、金のたまごがありました。
農夫は市場に持っていき、金のたまごを売り、美味しいハムとワインを買いました。
帰り道、ご婦人たちが“今日は虹が出なくて残念だったわね”とおしゃべりしているのが聞こえました。
農夫は、これでいいのだと思いました。

それから、ガチョウは金のたまごを生みました。
もう、虹色のたまごは生みませんでした。


或る日、
農夫は金のたまごが軽くなっていることに気づきました。

いったいどうしたのだろう?

金のたまごを生むガチョウをみると、羽毛をふくらませて、うずくまっています。

金のたまごを生むガチョウは、長生きしないのかもしれない。
そう思った農夫は、金のたまごを売ったお金で、鳥の健康によいと云われるものをいろいろと試してみました。

でも、あまり効果はないようでした。


或る時、農夫は市場で声をかけられました。
“虹の出るたまごはもう売らないのですか?”
“ああ、あれはうちのガチョウが、たまたま生んだものなのです。もう、生まないでしょう。”
“そうですか。。。実は、うちのガチョウがこれを生むのです”
その人は言いながら、なにやら袋からとりだしました。

それは、虹色のたまごでした。

農夫は言いました。
“もしかしてあなたのガチョウは虹色なのですか?”
“え?いいえ、普通の白いガチョウです。”
“そうですか。。うちのも普通の白いガチョウですが、翼の羽根が1本だけ虹色なのです。”
“ふ~む。ふしぎですね。なぜ虹色のたまごが生まれるのでしょうね。”

農夫は少し考えて、言いました。
“それにしてもあなた、あのたまごのこと、よく覚えていましたね。”
“それは、私はここで、あのたまごから煙がでて、虹ができるのを見ていたのです。
それから、市場でヒナを買って帰ったのです。ガチョウのヒナを!”

虹色のたまごを生んだその人のガチョウは、ヒナの時、あの大きくて美しい虹を見ていたのです。

“そのたまごを譲ってもらえませんか?”農夫は言いました。
“いいですよ。でも、虹は出ませんよ。中は普通の白身と黄身ですから。”

農夫は家に着くと、ガチョウのそばに、虹色のたまごを置いてみました。
ガチョウは丸い目を、もっと丸くして、
ガガーガガー!
と鳴きました。

農夫は虹色のたまごで卵焼きをつくり、鳥小屋でガチョウと一緒に食べました。
そしてガチョウに話しかけました。
“もう年なのだから、たまごを生まなくたっていいんだよ。今まで生んでくれたおかげで、もう十分暮らせるのだから。”
ガチョウは丸い目を、すこし細めて、
クルークルー
と鳴きました。

それから、ガチョウは金のたまごを生まなくなりました。
でも時々、虹のたまごを生むようになりました。

虹のたまごを生むたびに、ガチョウの白い羽根は虹色の羽根に換わっていきました。
虹のたまごを生むたびに、農夫は市場に持って行き、虹を出して見せました。
大きな虹を一目見ようと、遠くから市場にやってくる人もいました。
時々、虹のたまごは買われてゆき、農夫の知らない国で、大きな虹をつくりました。

市場の虹をみせると虹色のたまごを生むようになるらしいと噂になり、
自分のガチョウを連れてくる人もいました。
虹をみたガチョウがみんな虹色のたまごを生むようになったわけではありませんでしたが、
でも、虹色のたまごを生むガチョウが少しづつ、増えてゆきました。

時は経ち、、

或るところに、「虹の国」と呼ばれる国がありました。
虹の国のシンボルは、虹色のガチョウ。
そして特産品は、虹色のたまごです。
虹色のたまごを割ると、普通は白身と黄身ですが、
時々、もくもくと煙がでて、大きな虹が現れることがあるそうです。


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